コラム

バイオベンチャー列伝Ⅲ~「ギリアド・サイエンシズ」・・“ウィルスハンター”日本上陸


2012年、あるひとつのバイオベンチャーが日本法人を立ち上げました。
その名は「ギリアド・サイエンシズ」。


当時はまだ日本国内では知られていないベンチャー企業でしたが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのこの企業の名前を知らないMRはもはやほとんどいないと言っていいでしょう。
言うまでもなく、国内で一昨年相次いで発売したインターフェロンフリーのC型慢性肝炎治療薬「ソバルディ(一般名:ソホスブビル)」、「ハーボニー(一般名:レジパスビル/ソホスブビル)」で一世を風靡したベンチャー企業です。


この2剤は、それぞれ一昨年5月と9月に発売されましたが、IMSジャパンが発表した2015年4月~16年3月期の国内医薬品市場統計によると、「ハーボニー」の売上高は2693億400万円、「ソバルディ」も1508億7900万円(15年5月発売)と、発売から1年も経たずに国内医療用医薬品市場シェアの3.9%を占めるという驚異の売上記録を叩き出した文字通り史上空前の「お化け製品」となりました。
それと同時に、会社としての売上ランキングも、販売会社レベルで国内6位、販促会社レベルで5位に躍進しました。


ハーボニーは、ソホスブビル(NS5B阻害薬)とレジパスビル(NS5A阻害薬)の配合剤であり、国内臨床試験でSVR12(治療終了後12週時の持続的ウイルス学的著効)が100%を達成したという優れもの。そのため、この薬の発売を待って治療を開始された、いわゆるウェイティング状態の患者さんが相当数いらっしゃったことが、この「異常な」売上数字に反映されているということは容易に想像できます。


このギリアド・サイエンシズは5年前にC型肝炎、がん領域の医薬品を自販するため日本法人を立ち上げましたが、それまでは日本国内では、国内系の製薬企業と戦略的提携を行い、抗ウィルス薬を中心とした自社医薬品を販売してきました。


有名なところでは、グローバルでスイス・ロシュと提携し、国内ではロシュグループの中外製薬が販売しているインフルエンザ治療薬の「タミフル(一般名:オセルタミビル)」であり、日本たばこ(JT)と提携し、JT子会社の鳥居薬品が販売しているHIV治療薬の「ツルバダ配合錠(一般名:テノホビル/エムトリシタビン)」です。一般のMRのみなさんには馴染みがないかもしれませんが、この「ツルバダ」はHIV治療薬の中でも「核酸系逆転写酵素阻害薬」と言われるカテゴリーの薬剤で、ART(Anti-Retroviral Therapy)と呼ばれるHIV治療法のバックボーンドラッグとして必須の薬剤であり、国内では今や年商100億円以上を叩き出している大型医薬品なのです。


私個人の印象では、ウィルス領域の最先端企業であり、敢えて会社にニックネームを付けるとすれば、さながら「ウィルスバスター」、「ウィルスハンター」といったところでしょうか。
そのギリアドが遂に日本上陸を果たし、肝炎専門MRを大量採用し自販体制を整えたのです。今後の国内での活躍に大いに注目したいところです。


<ギリアド・サイエンシズこぼれ話 “白馬の騎士“として>
ウィルス領域の研究開発に強い同社ですが、同社のパイプラインを見るとそれだけではないことがわかります。同社のホームページを良く見ると、心血管系領域の開発品目があることがわかります。これは、2009年にバイオベンチャー「CVセラピューティクス(CVTX)」を買収した結果加わったパイプラインです。


CVTXの買収を巡っては逸話があります。
同社は循環器系に強いバイオベンチャーでしたが、実は2008年11月、アステラス製薬から買収提案を受けていました。当時のアステラスは、移植用免疫抑制剤 「プログラフ」 が2008年4月に、頻尿改善剤「ハルナール」も同年10月に米国での特許が切れ、更に日本で販売するファイザーのコレステロール薬の「リピトール」も2011年6月に特許が切れるため、CVTXの循環器ポートフォリオは何が何でも欲しい案件だったのです。


しかし、CVTXの取締役会はアステラスの提案を拒否する通知を行い、その後も実質的な協議を行う意思を示さなかったため、アステラスは2009年1月、CVTXの敵対的買収を決定し、CVTXの取締役会に1株16ドル、総額11億ドルで買収する提案を行います。
しかし、CVTX側は「企業価値を著しく過小評価している。」として、これを拒否する構えを見せたため、アステラスは2月末からの公開買付開始を決定します。
そこにホワイトナイトとして現れたのがギリアド・サイエンシズだったのです。


3月12日、ギリアドは1株20ドル、総額14億ドルでCVTXを買収する提案を発表、これに対し、CVTX取締役会は満場一致でこの提案に賛成、株主に対しTOBに応じるよう推奨、結局、アステラスはCVTX買収を断念、CVTXはギリアドに買収されることになったのでした。


<ギリアド・サイエンシズこぼれ話 ラムズフェルド会長>
ギリアドの歴代会長の中に、米国ジョージ・W・ブッシュ政権で国防長官を務めたドナルド・ラムズフェルド氏が名を連ねていることはあまり知られていないかもしれません。
同氏は、1974年、当時のフォード政権で史上最年少の43歳という史上最年少の若さで第13代国防長官に就任しますが、1977年、民主党のカーター政権誕生とともに実業界へ転身、1985年まで今は米ファイザーの一部となっている製薬会社サールの会長を務め、1997年から2001年まではギリアドの会長を務めていました。
そして、ブッシュ政権になって再び国防長官として招聘を受け、今度は前回とは逆に69歳の史上最年長の第21代国防長官として着任することになったのです。
同氏が国防長官として見せた実績は、評価の分かれるところかも知れませんが、その判断力、決断力、実行力の多くは実業家としての時代に磨き上げられたものだっだのかもしれません。


コンサルタント 藤川

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