コラム

「個別化医療」「テーラーメイド医療」という言葉が聞かれるようになって久しいですが、ここ数年でさらに「個別化医療」推進の動きに拍車がかかっているように思われます。

 

狭義の意味での「個別化医療」とは、遺伝子のタイプなどに応じて、個々の患者さんに最適な投薬を行うことを指しますが、MRさんたちにとって一番身近な話では、主にがんの分子標的薬などで、事前に患者さんの遺伝子診断などを実施し、その薬剤の効果があるかどうかを確認した上で投薬するというものではないでしょうか。

 

その先駆けと言われるのが、主に乳がん治療に使われる分子標的薬「ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)」。これは乳がんの中でも、「HER2」と言われるタンパク質ががん細胞に過剰発現している予後の悪いタイプにしか効かない抗がん剤。その代り「HER2過剰発現」の乳がん患者さんには高い著効率を示し、乳がん治療の中でもスタンダードな薬剤として知られています。

 

しかし、乳がん患者さん全体のうち「HER2過剰発現」タイプは2~3割、つまり、残りの7~8割の患者さんには効果がないため、そのがん細胞のタイプをあらかじめ分子診断で確認し、「HER2過剰発現」のある患者さんだけにハーセプチンを投薬するという非常に合理的な治療方法です。

 

「診断」というのは、病気かどうかを調べるものとばかり思っていましたが、これは、その薬剤を投与できるかどうかを調べる診断、言ってみればハーセプチン専用の診断薬というわけです。これは面白いですね。これを「薬に伴う」診断薬ということで「コンパニオン診断薬(CDx)」と言うらしいですが、その診断キットも各診断薬メーカーが発売しています。

 

国内で使われている主なコンパニオン診断薬(CDx)を挙げてみましょう。

ハーセプチンのCDxだけでも下記のようなものがあります。

 

まず、がん組織の中のHER2遺伝子を調べるタイプとして、「パスビジョンHER2DNAプローブキット」(アボット・ジャパン)、「HER2 FISH phramDX Kit」(ダコ・ジャパン)、「INFORM HER2 DNA」(ロシュ・ダイアグノスティックス)などが、がん組織の中のHER2タンパク質を調べるタイプとして、「ダコHercepTest Ⅱ」(ダコ・ジャパン)、「ベンタナⅠ-VIEWパスウェーHER2(4B5)」(ロシュ・ダイアグノスティックス)、「協和システインHER2/neu(M)」(協和メディックス)、「ヒストファインHER2キット」(ニチレイバイオサイエンス)、血液中のHER2タンパク質を調べるタイプとして「ケミルミCentaur-HER2/neu」(シーメンス・ヘルスケア)などがあります。

 

ここで注目したいのは、ハーセプチンの発売元である中外製薬と同じグループ会社である「ロシュ・ダイアグノスティックス」がハーセプチンのCDxを発売していることです。

製薬企業がCDxの共同開発、同時発売を進めていく上で、同じ企業内に診断薬部門が存在するということ、これは大きな強みと言えるでしょう。

 

ところで、このような「個別化医療」の薬剤の開発が昨今どんどん進んでいるようです。

患者さんにとっては、「確実に有効な薬剤投与を受けられる。」「逆に効果の期待出来ない患者さんへの投薬を避けることで副作用の発現などを防ぐことが出来る」、行政側にとっては「無駄な薬剤費を避けることが出来る。」など様々なメリットがありますが、製薬企業にとってのメリットとは何でしょうか?

 

これは昨今の開発難と無関係ではないように思われます。

つまり、開発計画の段階から、あらかじめ効果の期待出来る患者さんだけを試験に組み入れることで、開発の成功率を高めることが出来るわけです。前述のハーセプチンについて言えば、すべての乳がん患者さんを対象に試験計画を作っていたら、有効率2~3割で開発中止に追い込まれていたかもしれないわけです。

また、試験のサイズを小さく出来るので開発のスピードをUP出来、試験の費用を抑えることが出来ます。このようなメリットがあるからこそ、この開発難の時代に「個別化医療」の創薬が進んでいるとも言えるのではないかと思われます。

 

もちろん対象患者数が従来よりも格段に減ることになり、売上は大きくは見込めないというデメリットもあるでしょう。現にハーセプチンも7~8割のマーケットを「捨てて」いるわけです。しかしそれでもなお、開発費用を抑え、スピードをUPし、早期発売による長期の特許期間を確保出来る、というメリット、そして何よりも個々の患者さんに最適な治療を提供できるというメリットがデメリットを上回るという判断なのでしょうね。

 

では、効果のあるタイプ(レスポンダー)とないタイプ(ノンレスポンダー)をどうやって選別するのか?その指標となるものこそ「バイオマーカー」と言われるものであり、「個別化医療」の創薬に欠かせないと言われるゆえんです。前述のハーセプチンで言えば「HER2過剰発現」がそのバイオマーカーに相当しますが、今や、抗がん剤、アルツハイマー病などの治療薬の開発に当たっては、各社このバイオマーカー探しに必死となっているようです。

機会があればまたそのあたりのことについても書いてみたいと思っています。

 

 

コンサルタント:藤川

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