コラム

前回は、ロシュ(454ライフサイエンシズを買収)、イルミナ(ソレクサを買収)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(ライフテクノロジーズを買収)の3社が次世代シーケンサー(NGS:Next Generation Sequencer)の主要3プレイヤーだというお話をさせていただきました。

しかし、NGSのプレイヤーたちはそれだけではありません。
ロシュの「GS」、イルミナの「GA」、サーモフィッシャーの「SOLiD」などは、NGSの中でも第2世代と言われるシーケンサーです。これらは、DNA1分子を検出してシーケンシング出来るほど好感度ではないため、PCR法によるクローニングでDNA分子を増幅する必要があります。

ここにPCRバイアスという悩ましい問題が生じるのです。
基本的に増幅した配列の束を読んでいるため、増幅し易い配列があったり逆にしにくい配列があったり、PCRのミスなどのリスクを避けることが難しいという問題です。

そこで登場してきたのが1分子シーケンス技術を使ったNGSで、その代表格が「パシフィック・バイオ・サイエンシズ」の「PacBio」。これは第3世代のNGSと言われています。文字通り1分子を読むので、転写産物などの正確な量を読み取ることが出来るわけです。

しかし、1分子しか読んでいないので、読み取りの途中で失敗するとその分子は読み取れないというリスクを持っています。
PCRで増幅していれば、1分子の読み取りに失敗しても、残りの分子を読めるから問題はありませんが、1分子シーケンスの場合、確実に読み取る必要があり失敗は許されません。しかし、たとえそのようなリスクを抱えていたとしても、増幅していないDNAを読むからこそ真の生命現象を把握できる、これが1分子シーケンサーの強みです。

その他、1分子シーケンサーには第4世代と言われるシーケンサーがあります。
蛍光検出以外の方法で配列を読む技術をもつシーケンサーを指すようです。

世界初のNGS「454」を生み出した「454ライフサイエンス」の創設者、ジョナサン・M・ロスバーグ氏は、ロシュ買収後の454社を去った後、「イオン・トレント・システムズ」を創立、半導体シーケンサー「Ion Torrent」を世に送り出しました。
これは、DNAポリメラーゼによってヌクレオチドが取り込まれる際に放出される水素イオンを検出することで塩基を読み取るというもので、検出が簡単で安価に行えるという第4世代NGSの画期的なシーケンサー。

しかし、良い製品・良い会社が買収のターゲットとなるのは世の常。
「イオン・トレント・システムズ」も、2010年、NGSのラインアップ強化を目指すライフテクノロジーズに買収されることになります。(そのライフテクノロジーズも前述の通り、2014年サーモフィッシャーサイエンティフィックに買収されました。)

そして2012年、前評判の高かった英国「オックスフォード・ナノポア・テクノロジー」が第4世代NGS「GridION」「MinION」を発売。その原理は、膜たんぱく質中に形成したナノサイズの穴(ナノポア)にDNAを通し、その際のイオン電流の変化で塩基配列を読むというもの。4種類の塩基はそれぞれ体積が違うため、ナノポアを通る際にブロックするイオン電流量に違いを生じ、この差を読むという仕組みだそうです。

まとめてみましょう。
【第1世代】 従来型キャピラリーシーケンサー(国際ヒトゲノム計画で活躍)
電気泳動を行うサンガー法を採用している。
DNA増幅が必要であり、大腸菌で培養していた。

【次世代】いずれも電気泳動を行わないため、大規模な高速処理が可能な超高速シーケンサー

<第2世代>
 次世代の中でも初期のタイプで、DNA増幅はやはり必要だが、大 腸菌ではなくPCRによる増幅を行う。しかし、サンガー法を使っていない。では、どんな方法を使っているかと言うと・・・。

パイロシーケンシング法
DNAポリメラーゼによる塩基の伸長反応において、デオキシリボヌクレオチドを1種類ずつ加えた時にDNAに取り込まれて伸長するかを、その時に放出されるピロリン酸をATPに変化させて発光反応を起こさせ、その発光量を測定することでシーケンシングする方法(「Roche GS」が採用)

合成シーケンシング法
DNAポリメラーゼによる塩基の伸長反応において、異なる蛍光色素でラベルされたデオキシリボヌクレオチドを4種類加えた時に、DNAに取り込まれたのがいずれのデオキシリボヌクレオチドかを、その蛍光シグナルを読み取ることでシーケンシングする方法(「Ilumina GA」、「HiSeq」が採用)

ライゲーション・シーケンシング法
DNAポリメラーゼではなく、DNAリガーゼによるライゲーション反応において、ビーズ上の1本鎖DNAを鋳型に異なる蛍光色素でラベルされたオリゴマーを順次結合させ、その蛍光シグナルを読み取ることで2塩基ずつシーケンシングする方法(「SOLiD」が採用)
**ちなみに、「SOLiD」の名前の由来は「Sequencing by Oligo LIgation Detection」の頭文字からと言われています。

<第3世代・第4世代>
次世代の中でも1分子シーケンサーでDNA増幅を必要としないタイプ
(半導体シーケンサーを除く)
前述、「パシフィック・バイオ・サイエンシズ」の「Pac Bio」の他、
半導体シーケンシング法(前述、「Ion Torrent」が採用)
ナノポアシーケンシング法(前述、「オックスフォード・ナノポア・テクノロジー」の「GridION」「MinION」が採用)

かなり技術的、専門的な話になってしまって恐縮です。
とにかく、このように第2世代NGSを主力とする企業、第3世代・第4世代の1分子シーケンスの企業と入り乱れ、今やNGS業界は戦国時代そのもの。

そしてその後NGSは、個別化医療の進展、パーソナルゲノム時代の到来に伴い、自然・微生物・食品・腸内細菌などに関わるゲノム解析から、分子診断・医療分野へと本格的に進出してくることになるのです。

続きはまた今度・・・。

コンサルタント:藤川

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